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 お便りに ご関心ある皆様
春になり、生命が活発になる頃。 このお便りを書いている中伊豆も キジや鶯がつがいを探しては鳴き、梅の実がつき始め、 ぼうぼうと草も瞬く間に生い茂って、草刈りの季節になってきました。 みなさんお元気でしょうか。
月に一度と決めたこのお便りも、今回で4回目になりました。 この土地に根付き、整えていく時間をしばらく続けていく事もあり、 これから伊豆に籠る時間も増えそうです。 こうしてお届けすることがご迷惑になっていないか少し気にしつつ… 今のところ解約が1件もないことに、静かに励まされています ^^;

今年に入ってからは、あらためて素材について学ぶ時間を増やしています。 これまで綿を扱うことが多かったのですが、 どうしても絹の上でしか見えない色があること、 そして絹の繊維がどのように生まれるのかを知りたくなり、 蚕を育てはじめました。
22頭を毎日観察している中で、ようやく1頭が繭をつくりはじめました。 着物一着に2500〜4000個の繭が必要とされると知り、 その営みの大きさにただ驚くばかりです。
『中伊豆町誌』を読み返すと、この地域ではかつて、 絹を養蚕し、絹や木綿の反物を織り、染めて身につけるという暮らしが 営まれていたことが記されています。 素材から、糸へ、布へ、そして衣服へ。 それらがひと続きの営みとして、この土地の中に確かに存在していました。
近くの農家さんに幼い頃の話を聞くと、学校帰りに養蚕を手伝い、 餌になる桑が足りなくなると松崎まで取りに行った、という話もあり、 つい少し前までその風景があったことに、遠くない存在のように感じます。

そんな中、久しぶりに織り機を引っ張り出しました。 この冬にガラ紡機で紡いだ綿糸を緯糸にして、布を織っています。
ガラ紡の糸は均一ではなく、凹凸があり、 織り上がった布もまた、どんな表情になるのか予測がつきません。 それでも、その不均一さの中にしか現れない布の気配を、いまは面白く感じています。



今月中頃に島田で開催される「いろんな手」に参加します。
ニットを中心に、日々の暮らしが「ちょっと豊かに」なる提案を行う AND WOOL と、 「装いに芽吹きを」をテーマに、産業と作り手をつなげる 装いの庭 の合同プロジェクトとして、作家、農家、お菓子屋など、手仕事を営む人たちが集まります。
会場は、島田の川越し街道。 江戸時代、大井川には橋を架けることも船で渡ることも許されず、 人力によって川を越えていました。
川越人足に担がれ、流れの中を進んでいくその風景は、 歌川広重の「東海道五十三次 嶋田 大井川駿岸」にも描かれています。
絵の中には、労働着や風呂敷に使われた青い色が見られます。 それがもし藍であったなら、どのように染められていたのか。 そんなことを想像しながら、この場所に立つのもひとつの楽しみです。
(イベント詳細は AND WOOL さんのページをご覧ください)
東海道五十三次之内「嶋田 大井川駿岸」 歌川広重 天保4–5年(1833–34) 木版多色刷(横大判錦絵) 東京富士美術館所蔵より引用

また、橡人さんのお宿にて展示会も行います。
昨年11月、お宿がある小豆島を訪ねました。 橡人さんとの出会いはオーガニックフェスティバル。 出店場所が隣同士で、チャイが美味しすぎて 味を忘れたくないから何杯も飲んだのがはじまり、 丁寧に飲むのものを何杯も飲むなんて 品性のかけらもない感じだったなぁ(^^;;)
それからご家族で三島から小豆島へ移住され テント生活を行いながら古民家を骨組みから自らの手で整え、 静寂で優しい空間を作られていました。
その場で展示ができることを、とても嬉しく思っています。
※期間中の宿の宿泊も可能みたいです。展示と共にお楽しみください。 会期中はなんと正藍染の手紡ぎ木綿の寝具で眠れます(^ ^) https://reserva.be/mokujin

日々の中で、糸をつくり、藍で染め、布を織り、手を動かすこと。 かつてこの土地にあった営みに触れて、 旅先で出会った友人に励まされながら いま少しずつ自分に問い続けていこう。
また来月、お便りできればと思います。
かぜつち 南馬 久志
※本メールは、かぜつちのお便りとしてお送りしています。 行き違いがございましたらご容赦ください。 本メールへの返信はできません。 ご連絡は info@kazetuti.com までお願いいたします。
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